第39話

「淡いピンクの、オープンカーで…あ、エイジ恥ずかしいよね」

「んなことないよ!俺が運転で、アヤ助手席な」

エイジはアヤの横で運転する仕草をした。

「…忘れていいからね」

「え?」

アヤを見ると、前を見据えていた。

「忘れていいから」

「何言ってんだよ?アヤは……」

黙ったのは微かにアヤの肩が震えていたから。

「忘れていいから」

アヤはエイジを見ない。泣きそうになるのを堪えていた。

「……忘れるもんかっ!…」

「幸せになってね」

「っアヤ!!」

エイジはアヤを抱き締めた。


先に泣いたのは、エイジだった。


「エイジが幸せなら、私も嬉しいから…」

アヤの涙がエイジの肩に落ちた。

「アヤがいない幸せなんて、考えられない!!」

エイジは強く強くアヤを抱き締める。

「治るんだよ!!アヤはっ!!――生涯、アヤしか抱き締めないからな!俺は!!」

あとはただ、二人、むせび泣くだけだった。

夕食を運んでくる看護士がくるまで………。

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