第35話

「退院したら」

くぐもったアヤの声。


ないかもしれない…!


以前は治ると思っていた。治ると思い込もうとしていた。

「エイジと学校行きたい…」

「っ…おう!行こう!俺もアヤと行きたい」

できるだけ明るく努めた。

「エイジと、手を繋いで、学校行きたい」

「うん!繋いで行こう!あとは?」

アヤは無いと言うように小さく頭を振った。

「オイ!救急患者だ!!」

エイジは院内に踏み込むなり、強盗さながらの大声を張り上げた。


アヤは担架で運ばれていった。

エイジはアヤを抱き上げた態勢のまま立ち尽くしていた。

人生で初めて本気に「必死」になった。


目の前に人が立ち、両腕を掴まれた。

暖かく力強く大きな手。

「大丈夫か?」

覗き込んでくる顔はコウヤだった。


誰が呼んだのだろう?


「…俺は、大丈夫」

答えながら気付いた。

微かにエイジは震えていたのだ。

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