第30話

エイジと目が合うと女の子はにっこりと笑った。歯の抜けたところがぽっかり空洞になっていた。

「あなたがお姉ちゃんの天使さん?」

少しませた口調で言う。

「ぇっ?て――」


天使?

俺が?


エイジは混乱した。

「やだ!マリっ」

アヤが女の子、マリを止めようと伸ばした手をマリは擦り抜けた。

楽しそうにくるりと一回転。「キレイね!」にこにこ笑っていた。


「初めまして」

声がしてエイジはマリから母親に目線を戻した。

「は、初めまして!」

姿勢を正すと頭を下げた。

「娘がいつもお世話になってます。ありがとう」

「い、いいえ!俺…僕の方こそ!それに、お礼言われるようなそんな……」

「これからも、仲良くしてあげてね」

「はい!…はいぃ?」

それは、予期していない言葉だった。

これ以上会わないでくれ…などと、いつもと同じことを言われると思っていた。

そんなエイジの素っ頓狂な返事にも、母親は優しく笑み、深く頷いたのだ。

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