第29話

アヤは羽織っているパーカーのポケットからピルケースを出した。

「エイジ、さぼらないでね」

「何で?」

「さぼりそうなんだもん。大切なことなんでしょ?これにお薬入れて」

アヤがエイジにピルケースを渡した。

「私も、検査さぼらないでちゃんと受けるから」

ね?とアヤが首を傾げる。

「…うん」

「絶対だよ?」

「わ、わかってるよ!」

「約束、ね?」

強引に指切りをされても、気恥ずかしさでエイジは何も言えずにいた。

「いたー!お母さーん」

「マリ」

手が離された。

アヤを見ると、小さな女の子を見ていた。

その目線の先に、母親がいた。アヤが母親のほうへ歩いていく。

エイジは立ち上がり、そのまま緊張の面持ちで親子を見ていた。

女の子がエイジに近づいてきて、目をくるくるさせてエイジを覗き込んできた。

「…………」

どう接していいかわからず、エイジは目だけを女の子に向けた。

二つに分けて結んでいる髪が、女の子が動くのに合わせふわふわ動く。

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