第22話

目の前の壁を睨むように見る。

『もしもし?』

「俺、アヤが好きだ」

『…』

「正直に言っていいよ。そのほうが諦めれる。俺じゃダメ?」

『うん…』

「っそうだよな!だって、俺とエイジを電話で区別つくんだもんなー!」

ハヤテは電話台にもたれた。

『ごめんね』

「謝ることないよ。アヤは悪くない」

『…』

「あー緊張した。冷や汗だよ」

努めて明るく言う。

「あ、熱、また出るとよくないから、もう寝よう?エイジにはさらっと伝えておくよ」

『ハヤテくん!』

「何?」

『また会える?』

不安げなアヤの声。

「当たり前だよ。明日、庭園でね」

タイミング良く、電話の向こうでアヤを呼ぶ声がした。たぶん看護婦だ。

『見つかっちゃった。またね』

がちゃがちゃと忙しなく電話が切れた。

ハヤテもゆっくり受話器を置いた。


泣くタイミングを逃していた。


今日に限って庭園に寄らず帰ってきた自分を恨んだ。しかしお陰でその後16年、このことはバレずに済むのだ。


ハヤテはエイジを迎えに外に出た。

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