第71話

少々焦りが心の端に顔を出した。


焦る必要がどこにある?

やはり先輩がきても僕はこの引き金を引くのか?


また銃を構える。

河東は演説を終え、次の場所に移動しようとしていた。

途端に雄弁になる父。


ガッツポーズをしてマイクを下ろす。


ゆっくり頭を下げる。

父の礼のタイミングは分かり切っている。


 10 9 8 7 6...


カウントしつつトリガーに指を掛ける。


 5 4 3  ――っ!

スコープの端に先輩を確認して一瞬指を緩めた。


父が顔を上げ車に乗ろうと背を向ける。


カウントがマイナスを数えだして、何もかもがスローモーションに感じた。

同時に全部が凍り付いていく音が聞こえた。


 まったくの幻。


だけれど、妙に冷えきった気持ちで、僕はトリガーを引いた。


弾丸は当たり前のように父の頭を半分壊していた。


あとで、あれは僕にしては奇跡だ…と思うのだ。


その時の僕は至極冷静にライフルをバラしていた。


バンッ!!と勢い良くドアが開けられた。

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