一撃にかけた勝負

第70話

僕は待っていた。

先輩の到着を。


父の演説の終わりに間に合ったなら、やめてもいいと、一種の賭けをした。


覗き込むスコープには熱弁を振るう父がいた。

聴いている人間なんてほとんどいない。


百メートル向こうで演説している河東(かとう)のほうが勝っていた。

イケメンで賢い。元サッカー選手。


父はさっきから演説が途切れ途切れだ。


河東のほうを気にしすぎだよ…


僕は母に似てほっとしていた。

父の隣にいる兄も父に似ている。体型も。


スコープ前をふわりと白い物体が通過して、一度ライフルを下げた。

チラチラと舞い降りるは雪。


増えなければいいけど…


本降りになったら、一発で仕留める自信は無かった。


あまり撃ちすぎると場所を特定されてしまう。

二発。いや、やはり一発勝負だ。

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