第28話

臆病?…そうね。先生のことが好きだから余計。

美人な奥様がいるのも知ってる。


奪おうなんて思わない。


先生は私の気持ちに気付いてる。

それでも、他の子と同等に接してくる。

それが何を意味してるかくらい…。


そっとノブに手を伸ばす。

ゆっくり開けたのに螺が錆びた音が響いたから、ため息が出た。

風が吹き込み私は髪を押さえた。


先生は背中を向けて錆びた長椅子に座っていた。

先生から何か言ってくるだろうと待って背中を見詰めた。

いつも先生は明るい。

笑っててくれないと…。


なんか言ってください…


けれど、先生は何も言わない。

「…傷、痛くないですか?」

背中にそっと話し掛ける。

「マーユか…大したことない」

ふるふるした手の指には煙草を挟んでいた。

「…禁煙したのではないですか?」

「したかもなぁ」

口調は暢気だけれど、笑ってないと感じた。


振り向いてよ…

笑ってください…


服の裾を掴んで涙を我慢した。

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