第29話

好きな人の背中を見据えた。

視線は届いてるはず。

「先生…何か、あったんですか?」

恐る恐る核心に触れる。

「…いつ?」

「…昔…?…」

「昔……あったなぁ」

それからポツリポツリと先生は話をしてくれた。


だから、簡単に言ってはいけないし「タブー」なのだ……


心が痛んだ。

「ごめんなさい」

私は泣き出していた。

「いいよ」

「もう言いません。ごめんなさい」

「うん。マーユは賢いからわかってる」

「ごめんなさい」

ただ、泣きじゃくった。

長椅子の軋む音。次いで両頬を軽く摘ままれる。

「女の子泣かしたなんてバレたら奥さんに怒られるから。たーのーむーよー」

顔を上げると先生はな?といつものように笑った。


その笑顔さえも悲しく見えて、暫く涙が止まらなかった。


「ガラス高いんだよな…ああー、女の子とガラス…ダブルで奥さんに怒られる~」


ムンクの叫びをした先生に泣きながら吹き出した。

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