第106話
哉芽は夢を見ていた。母親が自分の身体に抱きついていた。
「哉芽はずっとお母様の玩具。貴方はお父様の身代わりよ。忘れないで。お母様を見捨てないで。お母様を一生愛してね。約束よ。」
哉芽はうなされていた。
「哉芽大丈夫?目を覚まして。私がいるわ。もう大丈夫よ。」
茉白が哉芽の汗を拭いながら語りかけている。
「母さんが。僕は玩具なんだ。嫌だ。触らないで!助けて。茉白。何処にいるの?」
茉白は哉芽の身体を抱き締める。痛みが全身に走ったが、それでも哉芽を抱き締めた。
「哉芽。私はここにいるわ。貴方を愛してる。目を開けて。私を見つめて。」
哉芽は茉白の温もりと香りで目が覚めた。
「茉白?嗚呼良かった。茉白が側にいる。何処にも行かないで。」
茉白は哉芽にキスをした。
「側にいる。ずっと側にいるから。愛してるよ。哉芽を誰よりも愛してる。哉芽も私を愛して。お願い。」
哉芽は茉白の瞳を見つめて深く息をした。
「ごめんね。心配したよね。側にいてくれてありがとう。茉白は大丈夫?痛みは軽くなった?
僕は大丈夫だから無理しないでね。」
二人は微笑みあった。
茉白の痛みは治らない。哉芽の痛みもいつ治るのだろう。それでも二人は幸せだった。愛する人が側にいて、自分を愛してくれ、必要としてくれる。二人はそれが一番幸せだった。
「もうすぐ朝だね。茉白。おはよう。」
「おはよう。哉芽。今日は良い天気よ。」
二人は笑ってキスをした。
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