第104話

優芽は診察室で燈馬に注射をしてもらっていた。燈馬の瞳を見ると胸が苦しくなるのを感じながら。


「痛みはない?あと一週間くらいで取り敢えず注射は終了かな。でも無理しないように。違和感が出たら直ぐに診察に来てね。」


「はい痛みはありません。ありがとうございます。これからもお世話になります。宜しくお願いします。」


健気な優芽の瞳が燈馬の心に僅かな火を灯し始めた。そんな自分に燈馬は戸惑っていた。


「哉芽君が此処に来て寂しいよね。手首が治っても遊びにおいで。茉白も待ってるはずだから。僕も楽しみにしてるね。」


優芽は燈馬の気遣いが嬉しかった。


「ありがとうございます。私は大丈夫です。毎日お弟子さんに囲まれているので。休みたくなったら茉白さんに会いに行きます。」


優芽は明るく微笑んだ。


今はまだ忘れられない。


優芽は紫耀を。

燈馬は茉白を。


優しい時間が二人の間に流れていても。

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