第95話

優芽と哉芽が楽しそうにパスタを茹でていた。茉白と燈馬はその姿を見つめていた。


「仲良いね。昔の僕達みたいだね」


「そうね。懐かしいね。こんな穏やかな時間がくるなんて。ありがとう燈馬君。」


燈馬は茉白の肩を優しくさすった。


「僕は何もしてないよ。みんな今まで辛い事を経験してきたから今が大切に感じるんじゃないかな。」


哉芽と優芽は茉白達の様子を見ながら笑いあっている。


「兄さん焼きもち妬かないの?燈馬先生の方がお似合いかもね。」


「僕もそう思う。でも茉白は僕のだからね。」


優芽は得意げに笑う哉芽が愛おしかった。


「兄さん。幸せになってねもう泣かないで。」


哉芽は優芽の頭を撫でた。


「優芽も幸せになるんだよ。そのためなら何でもするから。」


パスタが茹で上がる。四人は楽しく食事をした。


皿洗いをしている男性陣を見つめながら優芽は茉白に話しかけた。


「茉白さん兄を幸せにしてくれてありがとう。お母様が茉白さんにした事は許されないけど、兄は被害者だから。どうか兄を宜しくお願いします。」


茉白は優芽の手を握った。


「優芽さん。優芽さんも、もう大丈夫。自分の幸せを考えてね。全部背負って苦しかったでしょう。これからは沢山甘えて頼ってね。こんな身体だから頼りないかもしれないけど、何時でも優芽さんの味方でいるわ。忘れないで。」


優芽は茉白の言葉につい泣いてしまった。母の愛情とはこんな感じなのかも知れないと思ったからだ。茉白は優しく優芽を抱きしめた。


「大丈夫よ。いっぱい泣いていいの。みんな貴方が大好きよ。何も心配いらないから。」


寄り添う茉白と優芽をみて、哉芽も燈馬も幸せな気持ちに包まれていた。

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