第94話
燈馬は念の為優芽の手首を検査した。千晶の見立て通り腱鞘炎である事は間違いない。
「治療法はあってるよ。でも優芽ちゃんの皮膚は繊細だからテーピングは辛いかな。とりあえずシリコンの固定器具を用意するね。ちょっと動かしにくくなるけど、こっちの方が皮膚には良いから。」
優芽は自分の事を考えてくれる燈馬の姿に眩しさを覚えていた。
「ありがとうございます。私の為にすみません。」
燈馬は哉芽と優芽は顔は似ていないが人に対する姿勢や自己肯定感の低さは似ていると思った。まだ若いはずなのに。なんだか切なかった
「気にしないで。院長である僕の責任でもあるんだから。優芽さんには借りがあるしね。もっと甘えて良いよ。こんなおじさんで良かったら何時でも頼ってね。」
優芽は燈馬がおじさんなんて思えなかった。でも上手く表現できなくて悲しくなった。どうし
たんだろう私。優芽のスマートフォンが鳴る。
「兄からです。茉白さんからお食事のお誘いです。燈馬先生一緒に来て下さいだそうです」
燈馬の顔が輝いた。
「茉白の料理は美味しいよ。じゃあ行こうか。優芽さんと茉白の会話が楽しみだな。哉芽君がどんな反応するのか見ものだね。」
明るく笑う燈馬の顔を優芽は何故か見れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます