第91話

燈馬と哉芽が笑いあっている所に治療を終えた優芽が入ってきた。


「燈馬先生、兄さん、二人で何を話していたの?とっても楽しそうね。」


哉芽は優芽の瞳に影を見た。見覚えがある表情に哉芽は優芽の頬を触った。


「優芽どうしたの?治療痛かった?それとも誰かに何かされたの?」


燈馬は優芽を見た。確かに何かに怯えている様に見える。


「優芽さん。もしかして千晶何かされたの?ちょっと手首を見せてね。」


優芽は手首を燈馬に見せた。


「治療はちゃんとして頂きました。ただ、千晶先生の瞳と話し方が、何となく母に似ていて。少し怖かったんです。すみません。」


燈馬はテーピングを確認した。確かに治療はちゃんとしてあるようだ。優芽の手首を優しく握りながら優芽を見つめた。


「母さんに似てる?その先生は優芽に何を言ったの?どんな様子だったか覚えてる?」


優芽は燈馬が自分を心配そうに見つめている事にドキドキして、哉芽の声が聞こえていなかった。


「優芽さん。大丈夫?千晶は優芽さんに何を言ったの?」


燈馬が哉芽の質問を繰り返した。


優芽はハッとして顔を赤くした。


「治療中は千晶先生の言うことをなんでも聞くようにと。外出も控えてクリニックから帰る時は千晶先生が車で送る事にすると仰ってました。その時は反論しない方が良いと思ったので、了承しました。」


哉芽は唖然とした。


「優芽を独占しようとしているのか。だから母さんに似てるって言ったんだね。逆らうと逆効果だと思ったのも、母さんと同じって訳か。怖かったね。優芽、もう大丈夫。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る