第85話

ホテルに戻った茉白はフロントで鍵を受け取ろうとした。フロントの女性が茉白の名前を聞いて、茉白にカードを手渡した。


「オーナーより言伝を預かっております。ご確認下さい。」


茉白はカードを開いた。


(紫雲様より睦月様のお荷物を紫雲様のお部屋に移すように申しつかりました。紫雲様がお部屋でお待ちです。)


茉白は微笑んだ。フロントの女性に礼を言うとスイートルームへ向かった。

部屋のチャイムを鳴らすと、哉芽が扉を開けて茉白の手を捕まえて中へ導いた。


「茉白お帰り。病院どうだった?大丈夫?」


茉白は驚いた。スイートルームは薄暗く沢山のデジタルキャンドルが暖かい光を灯していた。


「足元気をつけて。見える?こっちに座って。」


哉芽は茉白を柔らかいクッションを乗せたソファに座らせた。


「哉芽これは?サプライズ?綺麗ね。」


哉芽は茉白に寄り添って座ると、優しく茉白を抱きしめた。


「感覚が過敏な茉白の為に考えたんだ。辛くない?何か食べる?」


茉白は一生懸命な哉芽が愛おしかった。哉芽なりのやり方で茉白を癒そうとしてくれる。


「ありがとう哉芽。このまま側にいて。」


茉白は目を閉じた。

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