第82話

優芽は柔らかく笑う燈馬を見ながら、不思議な感情を感じていた。今までこんなに暖かい色を持っている人を優芽は見た事がなかった。


「こちらこそ急にご連絡して無理なお願いをしました。すみません。優芽さんは此処で何を?誰かと待ち合わせですか?」


優芽は細い手首を燈馬に差し出した。


「燈馬さんのクリニックへ診察に伺う所でした。最近手首に違和感があって。そちらのクリニックに腱鞘炎に詳しいお医者様がいると教えて頂いたので。外から燈馬さんの姿が見えたので、御礼を言いたくてつい話しかけてしまいました。驚きましたよね。」


燈馬は優芽の白い手首を見る。今にも折れそうで思わず触れてしまった。


「大丈夫ですか?痛みはありますか?僕が診察しましょうか。」


優芽は頬が赤くなっていないか不安だった。燈馬の眼差しが苦しいくらい胸を締め付ける。


「大丈夫です。最近忙しかったので手を使いすぎたのだと思います。千晶先生の予約を取ってあるので、今から診て頂くところですから。」

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