第68話

哉芽は青い空を見つめていた。随分茉白に会っていない。哉芽は自分の気持ちを抑える為に忙しく働いていた。優芽は哉芽の様子を心配していた。やっと自由になれたのに哉芽はまだ孤独の中にいる。


「兄さん、少し話しても大丈夫?ちょっとお願いがあって。」


哉芽は優芽に笑顔を向ける。


「何かあった?僕ができる事なら何でもするよ

言ってごらん。」


優芽はパンフレットを渡して哉芽に説明した。


「華商如月さんから新しい取引先のホテルで小さな展覧会を開かないかってお誘いがあったの。リニューアルした宴会場のお披露目も兼ねてるそうよ。


それでホテルの視察をしてきて欲しいの。私が行ければ良いのだけど、スケジュールが厳しくて。」


哉芽はパンフレットを確認した。


「わかった。僕が行くよ。会場の映像を撮ってくれば優芽のイメージが湧きやすいかな。ホテルの詳細な資料も必要だね。顧問弁護士としても確認したいし。」


優芽は哉芽の優しさが嬉しかった。


「視察だけじゃなくて、いい街らしいから少しゆっくりしてきてね。ホテルのオーナーには私から連絡しておくから。部屋の予約もしておくね。温泉が素晴らしいそうよ。骨休めしてきてね。家元からの命令です。」


哉芽はいたずらっ子みたいな優芽の瞳が愛おしい。気遣いが嬉しかった。


「わかった。温泉楽しみだよ。ありがとう。」

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