第66話

茉白は夢を見ていた。紫耀と2人で華を活けている。紫耀は茉白の大好きな笑顔で茉白を見ている。この時間が本当に大切だった。紫耀さえいれば何もいらなかった。


「ありがとう。紫耀さん。貴方に出会えてよかった。葵を授けてくれた。私に愛を教えてくれた。だから、私も救いたいのに。貴方が愛した哉芽君を。どうすれば良いの?教えて。」


茉白は哉芽の痛みを無くしたい。心の痛みが治れば哉芽はまた人生を歩いて行ける。茉白の身体の痛みは生涯消えない。茉白はそれを自分の罪の証だと受け止めている。でも身体でも心でも痛みは辛い。治るなら治した方が良い。


「哉芽君は治るよ。燈馬君も治るよ。私の身体の痛みがもっと強くなってもいいから、私が身代わりになるから。」


茉白は眠りながらうわ言を繰り返していた。燈馬は茉白の頬に伝う涙を拭ってキスをした。


「もう。夢の中まで他人の痛みの心配なんて。結局茉白が一番強いんだよね。」

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