第63話

哉芽は振り返って茉白を抱きしめた。


「この事は父も優芽も知らない。僕は身も心も母が作り上げた人形だった。父の身代わりになる為に。でも茉白さんは僕の事を愛してくれる?茉白さんは自分なんかって言うけど僕こそ何も持ってないんだ。茉白さんだけが僕の生涯愛する人だよ。」


茉白は自分を呪った。茉白が咲来の狂気を止めていれば。紫耀と茉白が愛し合わなければ。哉芽の痛みの深さに涙が止まらなくて、哉芽の傷を癒したくて、茉白は哉芽を抱きしめて囁いた


「哉芽君お願いもう忘れて。哉芽君は素晴らしい人よ。哉芽君の全てを受け入れて愛してくれる人は必ず現れるから。」


哉芽は茉白を見つめている。茉白は思わず目を逸らした。


「茉白さん、僕はずっと茉白さんを待ってる。茉白さんも本当に愛してる人を見つけて。僕じゃなくてもいいから。」


茉白の額にキスをして哉芽は部屋から出ていった。

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