Episode16

第54話

優芽を呼んで父親の遺言を全て見せた。優芽は泣きながら読んでいた。


「優芽。優芽は父さんから直接聞いたんだね。優芽への遺言を。」


優芽は哉芽を見て頷いた。


「燈馬さんが来た後、お父様とお母様は珍しく言い合っていたの。それでお母様が兄さんに何をしたか知った。お父様はお母様を殺すんじゃないかと思った。そのくらいお父様は怖かった。私は急いで先生を呼んだわ。」


優芽の本当の父親か。哉芽は優芽を優しく見つめていた。


「先生はちょうど訪問診療に来てくれる途中だったからと直ぐに来てくれた。奇声を上げて暴れているお母様を鎮痛剤で眠らせてくれたわ。


その後三人で全て話したの。お互いが知っている真実を。お父様は体調が悪かったから辛そうで、胸が苦しかった。先生も私の目の前で初めて自分が父親だと認めたの。今まで自分がお母様の為にしてきた事を後悔してたわ。」


優芽の表情が苦しそうで、哉芽は辛かった。


「お父様と私は先生にお願いしたの。お母様を病院へ入院させて欲しいと。これ以上誰も傷つけさせない為に。先生は私たちに約束してくれた。お母様と一緒に知り合いの療養施設へ行って、一生涯共にする。娘に誓う。二度と姿を見せないと。」

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