第53話
タブレットの中のフォルダには哉芽の名前がついているフォルダもあった。哉芽はフォルダの中のメモアプリを立ち上げた。
(哉芽、今まで本当にすまなかった。君と向き合う事を恐れて何も出来なかった。哉芽や優芽を真実から守りたかった。でもそれは僕の逃げだった。
咲来の狂気に絡め取られて動けなかった。茉白を失って僕は何も考えられなくなった。でも、初めて葵の姿を見つけた時、涙が止まらなかった。茉白は一人で葵を幸せに育ててくれた。
綺麗な葵の瞳を見た時、哉芽の瞳を思い出したよ。君にそんな眼差しをさせてしまったのは父さんの責任だ。僕は自分の命に期限がある事を知ってやっと目が覚めた。僕の命にかけて咲来を永遠に閉じ込める。君が心を取り戻して幸せになってくれる事を祈ってる。
哉芽がこのメモを見たならもう茉白に会った事だろう。茉白なら君に安らぎと愛を与えてくれる。僕が生涯愛した人だ。彼女の身体が心配だけど、心は誰よりも強い女性だ。自分より他人の心配ばかりしてしまう。きっと哉芽も茉白に惹かれるだろうね。彼女の綺麗な心は人を惹きつけるから。哉芽、茉白を頼むよ。
葵や優芽は大丈夫。二人は愛を知っている。でも君と茉白は愛を見失っている。哉芽と茉白が愛し合うのは必然なのかもしれない。僕は君達を愛してるよ。どうか強く生きてくれ。僕の息子。愛しい哉芽へ)
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