第42話
茉白は長い夢の中にいた。痛みで意識が戻っても身体が重りで押されているみたいにベッドから動けない。
(脳が疲れている)おかしな表現だが、考えるのも誰かと会話するのもできなくて、ただ天井を見つめている。初めてクラッシュしたのは、あの日哉芽の誕生を知った瞬間だった。
それから長い時間身体と脳が動かなかった。葵がお腹の中に宿ってくれて、茉白は救われた。小さい命を守りたい。どんな痛みも辛さも耐えられた。
葵を産んで腕に抱いた時、本当に幸せだった。葵と一緒に懸命に生きてきた。葵に愛する人と結婚すると告げられた時は涙が止まらなかった。葵の幸せな姿が誇らしくて。
葵の結婚式の直後にあの人がやって来た。紫雲咲来。彼女はまだ私の罪を許していなかった。
「紫耀は渡さない。哉芽も誰にも渡さない。一生私の玩具にするの。だから茉白さん消えてよ。貴方も壊れて。」
彼女は画像を私に見せた。誰かが咲来さんを胸に抱いている。紫耀さんだと思った。胸が苦しくなった。
「もっとよく見て。紫耀じゃないわ。誰だかわかる?あの日の画像は紫耀に消されちゃった。だから今の紫耀と撮ったのよ。綺麗でしょ。」
今の紫耀さん?咲来の言葉に茉白は怖くなった。まさかそんな。
「哉芽よ。あの頃の紫耀と同じでしょう?」
咲来さんが笑っている。その瞬間、茉白はまたクラッシュを起こして咲来の前で倒れてしまった。咲来は嬉しそうに呟いた。
「さよなら。茉白さん二度と現れないでね。」
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