Episode11

第36話

哉芽は優芽と向かい合っていた。優芽にも伝えなければならない。両親の真実と姉の葵の事を。哉芽の表情で何か感じたのだろう。優芽が先に話し始めた。


「どうしたの改まって。茉白さんにお父様の遺言は伝え終わったの?兄さん、何が書かれていたのか私にも教えて。私は大丈夫だから。」


優芽の笑顔に哉芽は少し救われた。優芽だけはこのまま変わらないで欲しい。真実を知っても優芽だけは僕を必要としてくれると信じたい。


「僕は母からずっと茉白さんが父を奪ったと聞いて育った。父と茉白さんが裏切り者だと。でも違った。母が父と茉白さんを引き裂いた。惨い方法で無理やり結婚したんだ。その後も父は茉白さんを忘れられなくて僕が生まれた日に茉白さんを。」


優芽が哉芽を抱き締めた。


「兄さん知ってしまったのね。真実を。もう何も言わないで。私は全部知っているの。兄さんが生まれた日の事も。知ってた?兄さんの誕生日にお父様はいつも白い花だけを花材にして生け花を活けていたの。きっと茉白さんを思っていたのね。とっても苦しそうだったからお父様に聞いたの。なぜ白い花だけなのって。」

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