Episode10

第33話

哉芽の苦しそうな顔は紫耀が自分の前で苦しんでいるようだった。こんな顔を茉白が見たら。


「哉芽君、紫耀さんは葵の存在をいつ知ったの?遺言にはなんて書いてあったんだ。」


「5年前です。父はその頃膵臓癌の告知を受けて余命も宣告されていたので、茉白さんに連絡を取ることを控えたようです。また悲しませたくないからと」


燈馬は思い出していた。ああ、あの時か。


「5年前葵が結婚したんだ。茉白の作ったブーケを持って。その写真が式場のHPに載ったって葵が嬉しそうにしてた。そうかきっとそれをみつけたんだね。」


哉芽は父を思った。ずっと茉白さんを探していたのか。


「写真だけで父は自分の子供と確信したと。

茉白さんが他の人と結婚してできた子供かもしれないのに。」


燈馬はスマートフォンの写真を見せた。


「これでどう?君でもわかるでしょ。誰が葵の父親なのか。君の妹だよ。」


ウエディングドレスを身にまとい微笑んでいる女性。瞳が父にソックリだった。優芽よりも哉芽と葵は良く似ている。


「そうですね。僕の妹なんですね。」

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