第32話

哉芽は絶望した。


「僕が生まれた日。父が茉白さんを?」


燈馬は哉芽の姿を見て少しだけ後悔した。親達の問題をこの青年に背負わせているのではないかと。


「予定日はもっと先だったらしいけど、急に出産する事になったって、睦月の家には説明されてた。君は早産で低体重児だったらしい。」


哉芽が燈馬に顔を背けた。


「僕の話は結構です。その後、父と茉白さんはどうなったのですか?」


「紫耀さんと茉白はあの日以来会ってないよ。茉白は妊娠がわかった時、父親の事は絶対に言わなかった。自分一人の子供だと。産むと言ってきかなくて、折れた睦月家の人達は茉白を守ると決めた。


紫雲家には知られないように遠縁の病院へ茉白を入院させ、そこで葵が生まれた。葵は君の妹だ。」


哉芽が顔を覆った。


「ああなんて事だ。罪は紫雲家にあった。母はどうしてあんな嘘を。父はなぜ茉白さんを。」

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