第30話
燈馬は哉芽に背を向けて空を見つめた。辛そうな背中が哉芽の心を苦しく締め付ける。
「咲来さんは最後に一緒に食事をして欲しい。それで諦めると。紫耀さんは優しいから咲来さんの願いを断れなかった。
咲来さんは紫耀さんのワインに薬を入れた。紫耀さんは意識が朦朧として気がついたら咲来さんとベッドにいて咲来さんから二人が抱き合った証拠を見せられたらしい。」
哉芽は苦しかった。母はあの時も。身体が震えて立って居られず思わず座り込んだ。
「哉芽君大丈夫かい?もう止めようか。」
「いいえ大丈夫です。続けて下さい。」
燈馬は哉芽の様子が心配だったが、話を続けた。もう後戻りはできないのだから。
「紫耀さんが咲来さんを抱いている映像を見せられて、紫耀さんは絶望した。咲来さんは自分と結婚しないと茉白さんに映像を見せると。」
哉芽は父を思った。父さんは母さんに負けたんだね。茉白さんを守るために。
「 紫耀さんと咲来さんが結婚した時、茉白は必死に二人を祝福しようとした。
身体の弱い自分より、財力もあって健康な咲来さんの方が紫雲家の嫁として相応しいからと。
咲来さんが妊娠したって聞いた時もこれで良かったんだって。茉白は華道は続けたけど、紫耀さんに会わないようにしていた。
紫耀さんは家元になってから何かに追われるように仕事をしてたから二人きりで会うことはなかったらしい。」
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