第23話

身体が怠い。痛みは少し楽になっているようだ。茉白を包み込んでいる燈馬の腕をずらそうとするが、重くて動かない。子供のように眠る燈馬の顔を見て茉白は安らぎを覚えていた。


「燈馬君。起きて。燈馬くん。」


燈馬は茉白の薬の作用で軽く朦朧としていた。オピオイドは副作用が強い薬なので、茉白の口の中に自分の舌を入れていた燈馬もわずかだけれど薬の成分を摂取してしまった。


「茉白。起きたの?大丈夫?」


気だるそうに茉白を見つめて燈馬が茉白の額にキスを落とした。


「辛そうだったから、頓服を使ったよ。だからもう少し横になっていて。それともまた痛みが強くなってきた?」


茉白は燈馬の様子がおかしい事に気がついた。目が朦朧として口調もいつもよりゆっくりで。


「まさか。薬を飲んだの?燈馬君教えて。私にどうやって舌下錠を飲ませたの?」


燈馬がちょっと照れくさそうに微笑んだ。


「人工呼吸的な?薬が溶けるまで口の中に舌を入れて押さえたんだ。だから茉白の薬ちょっとだけ僕も飲んじゃった。」


茉白は燈馬が心配だった。もし燈馬に強い副作用が出たらどうしよう。茉白が燈馬の頬を撫でる。燈馬は嬉しそうに茉白の手の感触を楽しんでいた。


「そんな事、燈馬君に何かあったら。副作用は大丈夫?お願いだから無理をしないで。私より燈馬君の身体が大切なんだから。」


燈馬は茉白を少しだけ強く抱きしめる


「茉白。僕のお姫様。僕が茉白を守るから、お願いだからずっと僕の側にいて。」


燈馬はゆっくり目を閉じた。茉白も燈馬の体温を感じながら目を閉じる。今はただ眠りたい。

雨が止むまで。

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