Episode7
第21話
スマートフォンのアラームが鳴る。雨が降るようだ。燈馬は哉芽と話している茉白が心配だった。点滴は終わっているが、心理的苦痛が身体の痛みになってはいないか。
耐えられず様子をみようと茉白の部屋に向かうと青白い顔で走り去っていく哉芽を見た。燈馬は慌てて茉白の元に向かう。
茉白はベッドで悶えている。何かうわ言を言いながら。
「茉白痛いの?大丈夫?茉白。僕を見て!」
「止めて。お願い。許して。」
痛みで混乱しているのか。それともまさか。
「紫耀さん止めて。」
アイツの名前。フラッシュバックだ。
このままでは身体にかなりの負荷がかかる。クラッシュだけは絶対に避けないと。
燈馬はベッドサイドのテーブルに置いてあるポーチから錠剤を取り出す。オピオイドの舌下錠で痛みの頓服だ。
「茉白。薬を飲もう。口を開けて。」
痛みと混乱で歯を食いしばっている。口内で錠剤を溶かす舌下錠を今の茉白にどうやって飲ませられるか。
燈馬は優しく身体に触れながら茉白の耳元で囁いた。
「茉白。僕だよ。分かるでしょ?僕の目を見て僕を感じて。大丈夫だよ。アイツはいないよ」
茉白は燈馬の声と体温に少し反応した。目を少し開けて燈馬の瞳を探している。
「燈馬君。ああ私は。痛いの。痛い。」
燈馬は茉白の顔に手を添えて、口を優しく開かせる。震えているので、すぐに飲み込んでしまうかも。
「茉白。許してね。」
燈馬は錠剤を口に咥えると、茉白の口に錠剤を入れて茉白の口の中で錠剤が溶けるまで自分の舌を茉白の舌の上に押し付けた。
雨の音と茉白の香り。燈馬は幸せそうに茉白を抱いてそっと目を閉じた。
「一緒に眠ろう。雨が止むまで。」
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