第20話

哉芽の手が止まる。父と間違えている?何かを思い出しているようだ。生まれる?誰が?


「茉白さん目を開けて。生まれるって誰が?

父さんは貴方に何をしたの?茉白さん。僕を見て。僕は父さんじゃない!僕を見てよ。茉白さん。」


哉芽は茉白を強く抱きしめた。茉白が痛みで呻いても止められなかった。黒い情熱が哉芽を包んで欲望を抑える事が出来なかった。


哉芽は欲望のままに茉白にキスをしようと手で顔を包んだ。茉白は泣いていた。


「紫耀さん。止めて。貴方を嫌いになりたくないの。だからもう許して。」


茉白の涙が哉芽の手に落ちる。哉芽は我に返って茉白から離れた。


「嗚呼。僕は。どうして?」


哉芽は部屋から逃げ出した。これ以上茉白の側にいるのが怖かった。

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