第19話

茉白の顔色がどんどん白くなっていく。息遣いも激しくて腕で身体を抑えて痛みに耐えているようだ。


「茉白さん大丈夫ですか?少し休みましょう。横になりますか?」


哉芽は茉白をベッドに連れて行った。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。哉芽さんに辛い思いをさせて。優芽さんも傷つけてしまう。どうか葵の事は紫雲家の方々には知らせないで下さい。このまま私の事も葵の事も忘れて下さい。お願いします。」


茉白はうわ言のように呟きながら涙を流している。哉芽は茉白を落ち着かせようと、茉白の頭を撫でながら囁いた。


「茉白さん落ちついて。僕も優芽も大丈夫です。そんな事位で傷ついたりしないから。父も母も僕達にもっと辛い試練を与えているから。茉白さんだけが悪い訳じゃない。もう泣かないで。」


哉芽のスーツのポケットからアラームが聴こえた。ああ雨が降るんだ。茉白の身体中が痛みに震えている。意識も遠くなっているようだ。茉白の痛みを和らげたい。哉芽はそっと茉白の身体を擦り始めた。


茉白は痛みと心のショックで混乱していた。目を閉じていたので、哉芽の声と香りが紫耀の物に思えた。


「紫耀さん。やめて。お願い。もうすぐ貴方は父親になるのよ。私に触らないで。これ以上罪を与えないで。」

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