第17話

茉白は向かい合って座る哉芽の顔をじっと見つめた。声も顔もソックリだけど、どうしてこんなに孤独な空気がするのか。


紫耀は眩しくて温かい空気を持っていたのに。


「やっぱり、似ていますか?良く言われます。若い頃の父と同じだと。」


哉芽はうんざりしていた。何度も聞いてきた言葉。僕は父のコピーでしかないのか。


「いいえ。哉芽さんとお父様は違いますよ。私はあたながなぜ似なかったのか不思議だったんです。彼なら、哉芽さんがこんなに辛そうな瞳を持っているのを見逃すはずないのに。」


哉芽の眉がピクリと動いた。


「そうですか。面白い。貴方は何もご存知ではないようですね。今はそれで結構です。」


茉白は哉芽を傷つけてしまったようだ。


「ごめんなさい。そんなつもりじゃ。」


茉白の声を哉芽が遮った。


「すみません。始めますね。時間がないので」


茉白は泣きたくなった。この美しい青年は氷の壁で全身を覆っているようだ。今の茉白には何もして上げられない。


「はい。どうぞ。」


茉白は目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る