第15話
茉白は燈馬の声で目が覚めた。
葵と話しているのはわかるが、内容を理解する事が難しい。(ブレインフォグ)脳に霧がかかったように、短期記憶の欠落や言語理解の困難などが起きる。茉白の症状のひとつだ。
茉白の場合、寝起きや疲労度が上がるとブレインフォグが強くでてしまう。茉白はゆっくり呼吸をして燈馬の会話が終わるのを待った。
「燈馬君ごめんなさい。また心配かけて。」
燈馬は茉白の顔をそっと撫でながら茉白の目の動きを確認している。
「気分はどう?目眩はなさそうだね。痛みが酷いようなら頓服つかおうか。」
燈馬は茉白が理解できるようにゆっくり話しかけてくれる。こんなに自分の病を理解して一緒に考えてくれる事に本当に感謝している。
「大丈夫。まだ寝起きで少しぼんやりしてるけど。痛みは落ち着いてるから。」
燈馬は点滴を外しながら嬉しそうに話を続けた。
「聞こえてた?葵ちゃんから電話があったよ。茉白を心配してた。落ちついたら電話する?」
燈馬に捕まって立ち上がり茉白よりかなり高い彼の顔を見上げる。
「大きくなったね。燈馬君も葵も。葵には
後でメールするね。声を聞くと会いたくなるから」
燈馬は切なくなった。葵ちゃんと僕は同じ扱いなのか。
「酷いな。まだあの頃のまま?何時になったら男として扱ってくれるの?」
燈馬の瞳が色を帯びている
「またまた。その色気はもっと素敵な女性に使いなさい。勿体ないから。」
少し燈馬から距離をとって目を伏せる。動悸がするのは病気のせいだろう。
燈馬が茉白の腕を優しく掴んで引き寄せる。
「僕はずっと待ってるよ。茉白。今はまだこのままで幸せだけどね。」
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