Episode5

第13話

自宅に戻った哉芽はタブレットを眺めていた。


あのパスワードの意味。aoiは名前か。あおいが誰の名前なのかはなんとなく想像がついた。茉白に確認しなけれならないが、茉白は真実を告げるだろうか。


「厄介が増えたな。さてどうするか。」


タブレットと一緒に出した冊子を手に取る。ページをめくり症状について読み始めた。

気圧の低下で頭痛、目眩、身体の痛み、

気を失うように眠る場合もあると書かれていた。


「雨が降る前に逢いに行かなくちゃ。彼女に」


哉芽はスマートフォンに気圧の予報アプリを入れてアラームを設定した直後雨が降り始めた。


「雨が降ったら少しは楽になるのかな。」


茉白の辛そうな顔が頭から離れない。父親が命をかけて愛した睦月茉白。僕を壊した母親が壊れるほど憎んだ睦月茉白。30年前、僕が生まれた年。彼女は19歳だった。


今でも彼女は父を愛しているのだろうか。

それともあの従弟である医者と。


「なんで。胸が痛い。どうして僕の胸が痛いんだ。僕は父さんからの宿題を終わらせたいだけなのに。早く終わりにするんだ。」


哉芽は自分の身体を抱き締めるようにベットに丸くなった。雨の音だけが聞こえる。

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