Episode4

第10話

茉白は聞こえた声に耳を震わせた。


「今の声、そんなまさか。燈馬君、

来客って。だって彼はもう。どうして?」


燈馬は諦めて身体をずらした。茉白の前に哉芽の姿が映る。


「紫耀さん?嘘。彼じゃない。あなたは誰?」


哉芽は茉白から目を離せなかった。細くて儚げで少女の様な。そんなまさか。この人なのか。この人が父親を壊したのか。


「あの僕は哉芽です。」


茉白は哉芽の瞳を見つめた。ああ彼じゃない。怯えるように立っている青年は紫耀に生き写しだったが、彼を包んでいる孤独に茉白は気づいて切なくなった。


「哉芽さん。息子さんですね。睦月茉白です。お父様の事は聞いていました。お悔やみ申し上げます。」


燈馬はもう一度2人の間に入って茉白の様子を見つめている。茉白が壊れるのが怖かったから。


「茉白。大丈夫?辛くない?僕が彼と話をするから。無理しないでほしい。」


茉白は燈馬の顔を見ておどろいた。こんなに不安そうな彼を見た事はなかったから。


「燈馬君大丈夫。哉芽さんは私に用事があるのでしょう?心配しなくてもいいのよ。哉芽さんと話をするね。」


2人のやり取りは哉芽の耳には入っていない。ただ茉白の姿を目で追っていた。触れたい。こんなに強い衝動に身体を抑えるのがやっとだった。

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