第9話

燈馬は探るように見ながら言葉を選んでいる。

哉芽を茉白に会わせるかまだ決めかねているようだ。


「彼女はストレスに弱い。負荷がかかると

体調が悪化して最悪身体が動かなくなってしまう。それだけは避けたいのですが。」


硝子の人形のように扱われているんだ。哉芽にはそう見えた。


「どの程度のストレスになるのかはわかりません。でも父が茉白さんしか解らないと僕に託したものを、茉白さんに教えて頂かないと終われないんです。お願いします。」


例え彼女が壊れても。


哉芽の心の声は燈馬には気付かれない。哉芽の人を魅了する笑顔は父親と同じだった。


「茉白にはまだ君の事は話していません。

とりあえず茉白に伝えます。」


今日はもうここ迄かな。


哉芽がそう思って動こうとした時、奥の部屋から柔らかな声がした。


「燈馬君。今大丈夫?」


燈馬は後ろを振り返り慌てて茉白に駆け寄った。哉芽の姿を隠すように。


「ごめん、点滴の時間だったね。ちょっと

来客が来てて。もう少し休んでいてくれるかな。」


哉芽は燈馬が自分の存在を茉白に知られない様にしている事に怒りを覚えた。


「では先生。今日は失礼したほうが良いですか?なるべく早く話を進めたかったのですが」


わざと茉白に聞こえるようにそう告げた。

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