第8話
睦月茉白
彼女が哉芽が父親から託された宿題の答えを持っている。早く全てを終わらせたい、哉芽の心はただそれだけだった。
「茉白さんが此方に居ると伺ったのですが、ご挨拶させて頂けないでしょうか。」
燈馬は躊躇っている。そう感じていた。
「父から茉白さんへ預かっているものがあるので、お渡しにまいりました。お願いします。」
哉芽の言葉は丁寧だが有無を言わせない圧がある。燈馬はため息をついた。
「わかりました。その前にお伝えしたい事があります。彼女の事で。」
どうやら厄介な事があるらしい。哉芽もため息をつきたかった。
燈馬は小さな冊子を哉芽に渡した。表紙には見慣れない病名が書かれていた。
筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群
線維筋痛症
起立性低血圧
どれも知らない病だ。この冊子はこれらの病気の啓発に使われているのだろう。そう哉芽は理解した。
「僕もまだまだ勉強中なんですが、茉白はこれらの病気に羅漢しています。難病認定がされていない病で、原因も治療法も解らないので、今は対処療法をしています。僕は一応茉白の
主治医です。」
哉芽は少し戸惑っていた。難病?そんな人が
父親と。
「どんな症状があるのですか?面会は可能でしょうか。」
燈馬は説明をはじめた。
「まあ色々あるけど、倦怠感や目眩に不眠、
特に線維筋痛症は痛みが酷い人が多くてね。長い時間立っていられない人が多い。」
燈馬は茉白の姿を思い出し辛そうな表情を見せた。彼女が何故そんな事に。
「茉白さんも痛みが酷いみたいですね。
それで貴方が疼痛管理をしていると。」
哉芽の理解力の速さに少し驚きながら話を続けた。
「最初は筋痛性脳脊髄炎や起立性低血圧の
専門医が主治医で痛みが強くなった半年前から僕が先生の代わりに主治医になって今は
このビルで暮らしながら疼痛管理をしているけど、まだまだ難しくてね。手をやいてるよ」
哉芽は悩みはじめていた。そんな病状の人にいくら父親の遺言とはいえ色々聞かなくてはならないとは。
「会話は可能ですか?とにかく少しの時間で良いので、お会いさせて頂きたいのですが。」
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