第4話

妹の言葉に哉芽は目眩に似た感情を抱いた。

まだだ。まだ終わらない。


「表立った相続は終わったけど、父さんの残した宿題があるからそれを片付けないといけない。それからかな。」


それが終われば僕は本当に自由になれるのだろうか。自由になったら僕はどうなるのだろう。

哉芽の表情を見つめる優芽は泣きたい気持ちを抑えて哉芽の頬に触れた。


「お父様の宿題なんて、兄さんが辛いならする必要はないのよ。もうお父様は居ないのだから。このまま何もかも忘れて欲しい。

兄さん、笑って。

これ以上自分を傷つけないでね。」


哉芽は優芽を抱きしめて自分の顔を隠した。


「優芽。大丈夫だよ。優芽は家元としての人生を全うしてほしい。優芽なら幸せになれるから。僕は父さんに託されたんだ。逃げる訳にはいかない。どうせ救われないのなら、

早く終わらせたい。」


優芽は哉芽を抱きしめながら、涙が止まらなくなっていた。


「ごめんなさい。兄さんばかり苦しい思いをさせて。お父様もお母様も酷すぎる。私は何もしてあげられない自分が許せない。」


哉芽は優芽にもう何も言えなかった。ただそっと抱きしめて妹が微笑んでくれるのを待っている。

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