第2話

燈馬は人懐っこい笑顔で茉白の頭を撫でた。


「僕はまだ諦めてはいないよ。せめて気圧の低下で起こる激痛の発作だけは抑えてあげたい。その為にも茉白は我慢しないで。医者の僕を頼ってよ。いつまでも頼りない従弟でいたくないからね。」


燈馬の笑顔は昔から変わらないのに。10歳年下の可愛い従弟。


「はい。先生宜しくお願いします。」


頭を下げてから茉白は笑顔を燈馬に贈る。ちゃんと笑えている事を祈りながら。


「燈馬君シチュー食べにこない?まだ1人分の量に慣れてなくてまた作りすぎちゃっの。」


燈馬は白衣を脱ぎながら嬉しそうに笑っている。


「茉白のシチュー最高だよね。じゃあ今からバケット買いに行こうよ。他に欲しい物る?」


茉白がベットからゆっくり立ち上げるとすぐに燈馬が茉白を支える。


「そうだね。少し食材を買い足したいかな。いつもありがとう。」


「お礼は言わないって約束したよね。僕が茉白の料理のお陰で随分健康になったの忘れてない?もうインスタント食に戻りたくないよ。」


茉白の腰に手を添えた燈馬が見下ろすとなんだか茉白は少しドキッとしてしまう。


「私の料理で良かったら何時でも食べに来てね。冷蔵庫にストック入れておくから。」


燈馬は眩しそうに茉白を見つめていた。


「それでは行こうか、お姫様」


茉白は思わず吹き出してしまう。


「49歳のおばさんに向かって言うセリフじゃないわよ。王子様」


「僕も39歳のおじさんだよ。茉白は何も変わってない。いつまでも僕のお姫様だからね。」


呆れる茉白の背中を支えながら歩き出す。


「雨が降る前に出かけよう。」

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