雨が降る前に…

澄佳

Episode1

第1話

柔らかな光の中で身体を横たえた茉白の瞳は天井の影を見つめていた。


光の揺らめきの中で形が変わる影をただ身動きもせず瞳だけでおっている。


その姿は儚げで、壊れそうで、思わず抱き締めたくなる。


睦月燈馬(ムツキトウマ)は従姉であり患者である茉白に自分の欲望が伝わらない事を祈りながらそっと触れた。


「痛みはどう?点滴終わるね。」


睦月茉白(ムツキマシロ)は燈馬の優しい声の方に顔を向けて微笑んだ。


「ありがとう。燈馬君。大丈夫だよ。」


茉白は身体をゆっくり起こして燈馬と向かいあった。


「これで点滴始めてから1ヶ月か。まだ大きな変化は無さそうだし、茉白の病は中々厄介だ。」


青白い茉白の顔を見つめて茉白の表情を必死に探る。すぐに強がって我慢をするから痛みを緩和できているのか正直分からない。医者なのにもどかしくてたまらない。


「倦怠感や起立性低血圧は安静にするしかないけど、せめてその身体の痛みだけは緩和してあげたいのに。難しいね。」


茉白は燈馬を励ますように彼の肩を優しくさする。


「だから難病なのよね。仕方ないよ。治療法が

ないんだから。でも点滴をするようになってからは激痛の波は少し減っている様な気がするよ。燈馬君毎日ありがとう。」

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