第95話

哉芽は資料を確認すると薫乃に話しかけた。


「なるほど。千晶先生は小野さんを人形のようにコントールしていたんですね。


家に盗聴器やカメラまで。なぜそこまでする必要があったんでしょうか。」


琥珀も資料を見て辛そうな顔をしている。


「小野さんがもし彼に背くような事があれば

盗撮した画像を使って言いなりにする為でした


小野さんが入院中も連絡があって、小野さんが自分の言うことを聞くように脅してました。」


薫乃はボイスレコーダーを哉芽に差し出した。


「会話の内容が記録されています。盗撮に脅迫なんて酷すぎます。追起訴して頂けますか?」


「わかりました。代理人の弁護士に渡しておきます。小野さんの様子はどうですか。」


「体調の方は落ち着きました。カウンセリングはまだまだ時間がかかるでしょう。」


「心の傷はなかなか癒えないですね。多田先生これからも宜しくお願いします。


小野さんはまだ入院中なんですね。小野さんの家族は彼の事は何処まで知っているのですか」


哉芽の質問に薫乃は少し考えるような表情をした。琥珀の顔を見つめた薫乃は意を決して話し始めた。


「小野さんの家族にも問題があって。彼女のお父様もお母様にモラハラをしていたようです。


お母様はお父様の言いなりで、小野さんにもお父様の言うことは絶対で全てお父様の言う通りにするよう躾ていたようです。


小野さんは自己肯定感が低くて不安神経症もあります。自分で何も決める事ができないんです


小野さんが彼に依存したのも、そのせいです。

彼は小野さんの高校生の時の家庭教師でした。


彼は徐々に彼女を自分の言うこときくようにしていきました。


医学部受験に失敗した小野さんはお父様に激高されて、逃げるように一人暮らしを始めました


その時に手を差し伸べたのが彼でした。私は彼が受験を失敗させたと思っています。


彼女を孤独にさせて自分だけが彼女の味方だと思わせるのが狙いでしょう。」

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