第87話
燈馬は哉芽を呼び出した。2人きりで話したかったので、診察室で夜会うことにした。
哉芽は何故か不安な気持ちになった。茉白に何かあるのだろう。
茉白の身体の事は覚悟していた。でも2人で過ごす時間が余りにも幸せで、永遠を願ってしまう
哉芽はもう一度、気を引き締めて茉白の為に何が出来るのかを燈馬に聞こうと思った。
燈馬は診察室でパソコンのデータを見ながら哉芽を待っていた。
「燈馬さんお待たせしました。ここで話しがあると言う事は、茉白には聞かせられない話しですか。」
「哉芽君。お仕事お疲れ様。まずは座って。
これから説明するから。」
燈馬は哉芽を座らせた。パソコンの画面には心電図のデータが映っていた。
「この間定期検診で心電図を撮りに行って貰ったよね。今日データが届いたから説明するね」
「はい。お願いします。茉白の体調はどうですか。痛みは酷くなっていませんか。」
「痛みは悪化してないよ。精神的に落ち着いているしね。でも心電図のデータにちょっと気になる事があるんだ。」
「心臓ですか。茉白は大丈夫ですか。」
「今すぐという訳ではないよ。でもわずかだけど、脈が飛ぶ時があるんだ。
これが頻繁になったり、胸痛を引き起こすと
不整脈発作や心不全に繋がってしまう。」
「原因はなんですか?治る症状でしょうか。僕に出来る事はありますか。」
「茉白は生まれつき心臓が小さいから負荷が他の人の何倍にもなるんだ。
それが難病になった1つの要因じゃないかって言われてる。
症状は改善できない。これ以上悪化したらニトログリセリンを処方するしかない。」
「発作を止めるしか方法がないんですね。」
「うん。それで哉芽君にお願いがあるんだ。」
「なんでも言ってください。茉白の為になら
なんでもします。」
「ありがとう。哉芽君に頓服として発作止めを渡しておくね。
もし夜中や朝方に茉白が胸痛や強い動悸を訴えたら服用させて。」
「わかりました。茉白の側を離れません。」
「日中は僕が代わりに茉白の側にいるから。
君はいつも通り行動してね。
茉白は敏感だから普通に行動するようにしてね。不安にさせたくないからね」
哉芽は顔を両手で覆った。茉白が消えてしまうかもしれない。そう思うだけで苦しかった。
「辛いよね。耐えられる?本当に辛くなったらいつでも相談して欲しい。
1人で抱え込まないで、一緒に茉白を守ろう。
皆茉白がいないと困るんだから。」
「はい。ありがとうございます。覚悟はしています。少しでも長く一緒にいられるように頑張ります。燈馬さん、これからも宜しくお願いします。」
「もちろんだよ。哉芽君が茉白の側にいてくれるから茉白は笑顔で過ごせているんだよ。
これからも茉白を幸せにしてあげてね。君は
茉白の王子様なんだから。」
燈馬は哉芽の肩を叩いた。
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