第83話

薫乃が隣の部屋から出てきた。琥珀と優芽の父親は今後の事を話している途中だった。


「彼女は眠りました。かなり痩せていますね。

さっき彼女に電話があったので、途中で代わりました。多分婚約者の医者だと思います。」


「ご苦労さまでした。小野さんの相手はどんな対応だったかな。


こちらの資料では、かなり酷いモラハラをしているようなんだ。」


「そうですね。私が女性というだけで見下して来ました。小野さんを直ぐに返すように言われました。


小野さんの体調を説明して私が医師だと知ると何かを感じたのか、直ぐに電話を切りました。


典型的なモラハラ男ですね。ターゲットには強いのに、立場のある人間や地位が上の者には逃げ腰で。


こちらへ迎えに来るように伝えたら、慌てていました。


今日はもう小野さんに連絡しないでしょう。

小野さんにも連絡が来ないことを伝えたら泣いてました。」


琥珀は隣の部屋へ視線を向けた。心配そうな琥珀の表情を薫乃はじっと見つめていた。


「長内君は小野さんの事はどのくらい知っているのかな?哉芽君や優芽からどんな話しを聞いているか教えてくれないかな。」


優芽の父親が琥珀に聞いてきた。


「優芽ちゃんからは何も。哉芽から少し話を聞いていた程度です。


てっきり婚約は解消されていると思っていました。小野さんに会うのは今日が初めてです。」


薫乃は優芽の父親にカルテを見せた。


「まだ正確な診断ではありませんが、恐らくカサンドラ症候群です。強い共依存もあるので、


治療は時間がかかるでしょう。目眩は強いストレスと栄養不良だと思います。


まずは身体を治さないといけませんね。もしかして、ご両親との関係も良くないかもしれません。」


「どうしてそう思うのですか?」


琥珀は薫乃に聞いた。


「自己肯定感があまりにも低いので。モラハラだけではないと思います。


いつも緊張状態で暮らしていたのでしょう。

間に合って良かった。」


「多田先生。彼女を僕の知り合いの病院に入院させましょう。


先生もカウンセラーとして関わってください。

僕も医師として最後まで寄り添います。」


「もちろんです。傷ついている女性を救う為にカウンセラーになったんです。


健康になって幸せに暮らせるようにしましょう

先生もご指導宜しくお願いします。」

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