NO.28
第82話
薫乃は血圧を測りながら静雅を注意深く見ていた。目眩を起こしてかなり辛そうにしている。
「血圧が低いですね。目眩は頻繁に起きますか?他に辛い事があれば教えてください。」
「目眩は半年前位から時々あります。でも本当に大丈夫です。
もう帰らないと行けなくて。ありがとうございました。」
「今立ち上がるのは危険ですよ。貧血もあるかもしれません。
点滴させて下さい。それで少し楽になると思います。
準備しますので、少しお待ちください。」
薫乃が点滴の準備をしている間に静雅はスマホを手に取っていた。
急に顔をしかめると電話にでて小さい声で話しがじめた。
「はい。すみません。まだ帰れなくて。いえそうじゃなくて。ごめんなさい。
そんな事言わないで。ごめんなさい。ちょっと目眩がしていて。本当です。
今お医者様に見て頂いていて。はい。女性です
本当です。嘘なんて。ごめんなさい。」
薫乃は静雅に電話を代わるようにジェスチャーした。静雅は迷っていたが薫乃にスマホを渡した。
「すみません。お電話代わりました。はい。私は医師です。小野さんは今治療中です。目眩を訴えています。
はい。まだ時間はかかりますね。点滴をする必要があります。
小野さんが心配でしたらこちらへ来られますか。色々お話も伺いたいですし。
はいそうですか。はい。申し訳ありませんがこれから小野さんは電話に出られないかと思います。少し眠って頂くので。
はい。明日ですね。お伝えします。はい。私は多田と申します。訪問診療の医師です。
はい。では失礼します。」
薫乃は静雅にスマホを返しながら微笑んだ。
「今日はもう電話はかかってきませんよ。小野さんのお宅にも行かないと言っていました。
安心して点滴を受けてください。少し眠った方が良いですよ。」
静雅は何故かわからないが涙が出た。薫乃は静雅の肩を優しく支えた。
「さあ横になって下さい。起きるまで側にいますから。」
静雅は薫乃に微笑むとゆっくり目を閉じた。
「先生。ありがとうございます。彼は悪くない私が全部悪いんです。
だから早く元気になって、彼の為に動かないと
点滴をして眠ればよくなりますよね。」
「とにかく眠りましょう。目が覚めたら、またお話聞かせてください。
私達は小野さんの体調を良くする為に最善を尽くします。安心して任せてください。」
「私なんて。そんなにして頂かなくて大丈夫です。いつも少し休めば治りますから。
今回はたまたま寝不足だっただけです。本当にご迷惑をおかけしてすみません。」
「大丈夫です。今は眠ってください。」
薫乃は静雅の頭をゆっくり撫でていた。
静雅は目を閉じると疲れた顔をしてそのまま眠りについた。
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