第81話

優芽の父親は資料を確認すると琥珀に告げた。


「どうやらこの人は自己愛性人格障害の疑いがありますね。あの女性は彼にモラハラされていますね。」


「モラハラですか。具合が悪そうなのは何故ですか?それも彼が原因ですか。」


「そうですね。詳しい事は診察が終わらないとわかりませんが、恐らくカサンドラ症候群になっていると思います。」


「カサンドラ症候群ですか。大学で心理学を学んだ時に勉強しました。


心理的な負荷が身体の不調になって現れるんですよね。」


「そうです。今すぐに彼から離さないと危険ですね。自傷行為や自殺衝動が起きないうちに

治療を始めた方が良いと思います。」


琥珀は隣の部屋を見つめてため息をついた。


「酷い男ですね。女性を傷つけて支配するなんて。本当に許せない。」


「自己愛性人格障害は恐ろしいですね。関わった人は不幸になってしまう。


本人は無意識なのが厄介なんです。自覚がないので相手を追い詰めてしまう。」


「先生。彼女をどうすれば救えますか?」


「私の知り合いの病院に入院させましょう。

体調を回復させないと心理療法もできないので


今電話して手続きしておきます。」


「ありがとうございます。お願いします。」

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