第77話

琥珀は優しく微笑んで静雅に語りかけた。


「小野さん。体調は大丈夫ですか?僕は小野さんが心配なんです。


食欲はありますか?もしかして眠れてないとか

貴方が倒れてしまいそうに見えるんです。」


静雅は琥珀の目を見ていた。優しくて暖かい。

こんな風に見つめられるのは初めてだった。


「私は大丈夫です。ただ千晶さんが心配で。

彼の事で頭がいっぱいで、自分の事が疎かになっていたかもしれません。


顔色が悪いのは知っています。でも本当に大丈夫です。」


「小野さんは彼に怒らないのですか?彼は小野さんを裏切って傷つけたのではないですか?」


「怒るなんて。全て私が悪いんです。私が彼の理想通りに出来なくて。


それに彼は全て誤解だと言っています。ただ治療をしたり、癒してあげていただけだと。


私は彼の言う事を信じています。彼を助けるのは私の意思です。」


彼女の姿が痛々しくて琥珀は胸が苦しくなった


「小野さんは優しい方なんですね。あなたに愛されている人は幸せですね。」


「私なんて。もっと努力しないと。彼が安心して仕事ができるように。


私が彼の為に出来る事は全てします。私には彼しかいないんです。」


琥珀は彼女の綺麗な瞳を見ていた。なぜこんなに綺麗な瞳を持っている人が傷ついているのか


自分が傷ついているのもわからないくらい彼女の心は疲弊しているようだ。

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