第72話

優芽からのメッセージを琥珀は事務所で受け取っていた。


楽しそうな笑顔で溢れている写真に琥珀も1人で笑顔になっていた。


事務所の窓から夕日が差し込んでくる。


琥珀はやっと少し肩の荷が降りたような気がしていた。後は優芽と両親を会わせないと。


次の計画を立てながら優芽へ返信を送っていた

幸せな時間がいつまでも続くように願いながら


急に後ろのドアが開く音がした。琥珀は驚いてドアの方へ振り向いた。


「紫雲哉芽先生はいらっしゃいますか?

どうしてもお願いしたい事があるんです。


すみませんが紫雲先生に取り次いで頂けますでしょうか。」


そこにはとても細い女性が立っていた。


「哉芽は今地方に行っています。帰りは明日になりますが。」


女性は俯いて震えていた。


「今日中に紫雲先生にお会いできないと困るんです。どうしてもお願いを聞いて頂けないと。


私は。どうしたらいいか。お願いします。

どうか紫雲先生と連絡を取らせてください。」


琥珀は必死に頭を下げる女性を見つめた。

儚げて瞳がガラスのように綺麗だった。


「とりあえず座ってください。僕で良ければ話をお聞きしますが。僕は長内琥珀と言います。


哉芽のビジネスパートナーです。もし良かったら、あなたのお名前を教えてくれませんか。」


琥珀は女性を座らせて微笑みかけた。


女性は琥珀の顔を見つめた瞬間、涙を流した。


「私は小野静雅(おのせいか)です。千晶さんの

婚約者です。」


琥珀は千晶と言う名前を思い出していた。確か燈馬のクリニックを首になった医者だったはず


優芽や複数の女性を傷つけようとして、哉芽が刑事告訴させたはずだった。

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