第54話

茉白は窓の外を見上げた。もう日が暮れていた


「優芽さん見て。下弦の月が出てるわ。」


優芽も窓の側に行って空を見上げた。


「下弦の月。茉白さんもお父様から聞いたのですね。素直になれる月のことを。」


「もう一度下弦の月から始めましょう。私達の物語を。もう誰も不幸にならないように。


優芽さんは素直になるだけで良いのよ。皆貴女を愛してるから。」


「茉白さん。ありがとうございます。もう一度良く考えてみます。自分の気持ちを。」


「良かった。これで安心したわ。一つだけ優芽さんに哉芽の事でお願いがあるの。」


「なんですか?私ができる事なら何でも言って下さい。」


「私は自分の命が尽きるまで哉芽の側にいて彼の痛みを癒してあげたい。


でも私は後どのくらい生きられるかわからないの。」


「なぜそんな事が。難病のせいですか?」


「直接の原因では無いのよ。でも痛みを抑えたり体調を整える薬は肝臓に良くないから。


心臓も普通より小さいから負荷がかかってるらしいの。


同じ病気にかかっている人は癌になったり心臓を患ったり難病以外の要因で亡くなっているの


私は哉芽より歳上でこんな身体だからいつ別れがきても良いように、毎日を慈しんで彼が幸せになるように考えてるわ。」


「そんなに思われて、兄さんはきっと幸せだと思います。」


「だから、私がいなくなった後哉芽にはもっと幸せになって欲しいの。


その為にどうか哉芽の保存してある物はそのままにしておいて。


ほかの人を愛して家族を作る為に。」

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