第53話

優芽は茉白の笑顔を見上げた。


「私は紫耀さんを愛していた。でも時がすぎてもう1人で生きていくと決めた時、哉芽が私を愛してくれた。


だから命がある限り彼の側にいると決めたの

私という存在が彼を幸せにできるなんて、


こんな身体で年上の私が彼の痛みを癒せるなら

それだけで嬉しいの。


優芽さんも同じよ。貴女が笑顔でいるだけで、皆幸せになれるの。


だから燈馬君の側で燈馬君に愛されているだけで良いのよ。


燈馬君の側にいる事は優芽さんにとっても幸せになる事でしょ。」


茉白は優芽を優しく抱きしめた。


「茉白さん。私は幸せになって良いのですか?お父様は最後まで苦しそうで、私はお父様に何もしてあげられなかった。


お父様に育てて貰った恩を返せていないのに、

こんな私が幸せになりたいなんて。」


「優芽さん、ごめんなさい。紫耀さんが苦しんだのは私のせいよ。


私が紫耀さんから逃げて黙って葵を産んだから

だから優芽さんが苦しむ事は無いわ。


今優芽さんが哉芽君の子供を産んだら、哉芽君が紫耀さんと同じようになる。


だからもう終わりにしましょう。紫耀さんは必ずわかってくれるから。」

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