第48話

稽古場に入った茉白は思わず涙が溢れた。


「茉白大丈夫?辛いの?泣かないで。」


哉芽が心配そうに茉白を抱き寄せた。


「哉芽大丈夫よ。懐かしくて。ここは私の大好きな場所だったから。また来られて嬉しいの」


優芽が茉白の傍に駆け寄った。


「茉白さんごめんなさい。辛くないですか?

茉白さんの負担になる事はわかっていたのに。


来てくれてありがとうございます。この場所でしか話せない事なんです。」


茉白は優芽に微笑んだ。


「優芽さん私は大丈夫だから。今日此処に来られて良かった。もう私は過去と決別できた事が

わかったから。」


「茉白さん、強いですね。私はまだ迷ってばかりで、皆さんに迷惑ばかりかけています。」


哉芽は優芽の肩を支えた。


「優芽。何を悩んでいるの?僕は優芽に素直になって幸せに暮らして欲しい。


その為にこうして集まったのだから。僕と茉白は大丈夫だから。全て話して欲しい。」


琥珀が叶芽と茉白に語りかけた。


「2人に話したい事があるのは優芽ちゃんだけじゃないんだ。僕から話すね。僕達の物語を。


長くなるから茉白さん、身体が辛くなったら言ってね。」


「はい。大丈夫です。座って聞きますね。」


燈馬が茉白を椅子に座らせた。


「茉白。薬は用意してあるから。脈拍だけ見させてね。」


「ありがとう燈馬君。燈馬君が幸せそうで嬉しいな。優芽さんのお陰ね。」


燈馬は恥ずかしそうに笑っていた。


「心配かけてごめん。僕は今幸せだから。もう僕の事は気にしないで。今までありがとう。」


「これからも大切な従弟である事は変わらないわ。ずっと幸せでいてね。」


2人は見つめ合って微笑んだ。


「じゃあ良いかな。始めよう。」


琥珀が切り出した。哉芽の身体の事、琥珀の両親の事、咲来の犯した罪


琥珀はゆっくり話していった。燈馬は茉白の様子に気を配った。


哉芽は無表情だったが、茉白の手を握っていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る