第21話

琥珀は優芽に書類を渡しに稽古場に来ていた。さっきのメールではもうすぐ着くはずだった。


車が止まっていて中の2人が抱き合っている。

もしかして。そう思った時優芽の顔が見えた。


苦しそうな表情に思わず車の窓を叩いていた。


「優芽さん、大丈夫?」


優芽を抱き締めていた男の顔がこちらを見た。

燈馬だった。


優芽は車から降りて慌てて笑顔を作っていた。


「琥珀さん。もう着いたんですね。書類ですよね。わざわざありがとうございます。」


燈馬も車から降りてトランクから荷物を取り出した。


「優芽さん僕はこれで。また連絡します。お願いだからこれ以上悩まないでね。」


「送っていただきありがとうございます。

おやすみなさい。」


優芽は燈馬の顔が見れなかった。


「長内さん失礼します。」


「燈馬先生。おやすみなさい。」


2人が挨拶を交わしている間に優芽は稽古場へと走り出した。


燈馬が後を追いそうになったが、琥珀がそれを止めた。


「燈馬先生、今はダメです。今日はこのままお帰り下さい。後は僕に任せて下さい。」


燈馬は苦しそうに息を吐いたが、琥珀の目を見て頷いた。


「わかりました。優芽さんを宜しくお願いします。何かあったら直ぐに連絡して下さい。」


琥珀に名刺を渡すと燈馬は帰って行った。

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